不動産会社が金融機関から運転資金を借入する方法
現在、不動産会社を経営している人、もしくはこれから不動産会社を起業しようとしている人に是非知っておいてほしいことがあります。それは不動産会社には、絶対に"資金調達"が欠かせないことです。
当記事では、ベンチャー・中小中堅企業の不動産会社向けに特化したデットファイナンスの活用方法を解説していきます。弊社代表が、金融機関10年、及びベンチャー不動産会社2年の経験から、財務面で課題を抱えている不動産会社経営者の方々が多くいることに気づきました。そのような経営者の方々向けに金融機関目線で不動産会社が資金調達をしていける方法等をご紹介していきますので参考にしてみてください。
目次
運転資金とは?
運転資金とはひとことで説明すると「企業が事業を行うために必要となる資金」のこと指します。
製造業や卸業であれば、売るための商品を先行して仕入れる必要があり、その仕入に対する支払が先行して発生します。ほかに、従業員の人件費、オフィスを借りている地代家賃等の支払なども欠かせません。つまり、金融機関は、これらのように日々事業を営んでいく上で、売上金回収までの期間に先行して立替えして支払う必要がある資金=運転資金(立替資金)と定義づけて審査を行っています。
また、ここでお話する運転資金は短期借入金ではなく、長期借入金として資金調達する方法をお話していきます。
不動産会社に運転資金は存在しない?
結論からお伝えしますと「不動産会社に運転資金は存在する」が正しいです。では、不動産会社の運転資金とは何でしょう?
1.物件仕入で支払う資金
2.事業運営に必要な人件費や地代家賃等の諸経費支払
3.事業拡大に伴う人材採用費や広告費等の諸経費支払
不動産会社の代表的な運転資金は上記3点になります。
不動産会社の運転資金=プロジェクト資金(短期借入金)という考え
前述の1~3であれば、他業種よりも運転資金額が大きくなる傾向にあるのでたくさん借りれるのではないか?とお考えの方も多くいらっしゃると思います。
答えは、お考えの通りです。ですが、運転資金にも大きく分けて以下2種類があります。それは借入する期間の差です。
A.短期借入金(~1年以内)… プロジェクト資金/賞与資金/納税資金等
B.長期借入金(1年超) … 運転資金/設備資金等
不動産会社の物件仕入にBの長期借入金を活用することはできません。なぜか?それは金融機関の中でAのプロジェクト資金(※)で支援する考えが確立しているからです。
物件仕入(販売用不動産仕入)=プロジェクト資金
事業者が物件の所有権を有し、金融機関はその物件に対し抵当権の担保設定を行い、融資をすることとなっています。所謂、資金使途が限定された融資となり、機動的に仕入を行いたい事業者からすると柔軟性が低い融資形態だと言えるでしょう。
※柔軟性は低いものの、プロジェクト資金での借入も並行して行うことが極めて重要になってきますのでご注意ください。
では、「企業として自由に使える資金を確保したい」というお考えをお持ちの方々は、上記AとBどちらで借入することが好ましいと思いますか?
答えは「B」ですね。
では、次にBで調達する方法をお伝えしていきます。Bで多くの資金を借入することができれば、物件仕入にも活用できますし、諸経費支払、先行投資に必要な資金等々、資金を確保することで機動的かつ柔軟に投資を進めていける状態を創り出すことができるというわけです。
政策金融公庫/保証協会付融資等を活用した運転資金(長期借入金)調達方法
ベンチャー・中小中堅企業の不動産会社は、大きく分けて以下3つの方法で運転資金(長期借入金)を調達する方法が良いと思います。融資枠を把握し、しかるべきタイミングで申出を行うことが重要になってきます。
また、一度に多くの融資を受けたいと伝えても、それは不可能です。金融機関との取引構築は時間をかける必要があり、且つしっかりとした準備が必要になるので安易に打診をすることはやめておきましょう。
政策金融公庫(政府系金融機関)
政策金融公庫と言えば、「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」等、創業時に資金調達が行えることで活用する起業家の方々も多くいます。
不動産会社を開業する方でも政策金融公庫から資金調達することは可能ですが、申出内容、資金使途の説明がポイントとなってきますのでお気をつけください。勿論、創業時でなく、事業を継続している限り融資申出はできますので、うまく活用することをおススメします。
【政策金融公庫(国民生活事業)の場合】
創業時の借入金目安 :500万円~1000万円(無担保・無保証)
2期目以降の借入金目安:1000万円~7200万円(無担保・無保証)
保証協会付融資
保証協会付融資は、民間金融機関(メガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合等)を経由して、融資申込を行うケースがほとんどです。直接、信用保証協会に打診をしても、民間金融機関を経由しての申し込みをお願いされます。
保証協会付融資は、民間金融機関に大きなリスクは存在しません。借りる債務者(事業者)側が、万が一、返済できなくなっても、保証協会が民間金融機関に対して、返済できなくなった分を代位弁済してくれるからです。その為、比較的リスクが高いと考えられている業種あビジネスがまだ安定していない創業5年未満の企業などに対しては保証協会付融資のみでしか対応しない民間金融機関も多く存在します。
不動産業は保証協会付融資が前提とされている代表的な業種であり、特にベンチャー・中小中堅企業の不動産業であれば、この保証協会付融資に頼らざるを得ず、いかにうまく活用することで機動的な経営ができるかが決まってきます。
初回借入目安 :500万円~2000万円(無担保・連帯保証有)
2期目以降の借入金目安:~8000万円(無担保・連帯保証有)
オリックス保証付融資(東京都限定)
オリックス保証付融資は、仕組みは②同様、オリックス㈱が民間金融機関から事業者側への融資に対して保証してくれる制度の融資になります。本融資を活用する上で気を付けるべき点が以下2点です。いきなりこの融資制度を活用しようと思っても、すぐに活用できないという点がデメリットになります。
1.取扱金融機関が限定されている
きらぼし銀行
東和銀行
東日本銀行
西京信用金庫
西武信用金庫
等々
2.オリックス保証制度の取扱いがある金融機関で融資取引1年以上の実績がある
初回借入目安:500万円~3000万円(無担保・連帯保証有)
3期目以降の借入金目安:~5000万円(無担保・連帯保証有)
まとめ
不動産の資金調達とは、事業を拡大する上で必要になってくるものであり、必ずぶち当たる財務課題になります。運転資金(長期借入金)を最大限に調達することで、資金的余裕が生まれ、さまざまなことに挑戦できるステージが整います。
運転資金(長期借入金)を調達する上で重要なポイントは以下3点になります。
①金融機関が融資したいと思える決算書・試算表等になっているか
(↑↑↑ これが一番重要です)
②融資の申出タイミング ・・・ 借りて良い時期なのか。①の内容は整っているか
③資金使途の説明 ・・・ なぜお金が必要なのか。
不動産会社の経営者の方々は是非ご参考にしてみてください。ご相談がありましたら、何なりと問い合わせフォームよりご相談をしてください。